シンプルさの追求 — 原点にして頂点

「シンプル」という言葉について、私の考えをお話しさせてください。
私にとって「シンプル」とは、単に「簡単」や「単純」ということではなく、「無駄がなく、洗練されていること」を意味します。
世の中に存在する多くのものには、複雑な機能や構造など、たくさんの要素が詰め込まれています。
そうしたものは便利でメリットも大きい反面、相応のデメリットも生じます。
便利な機能があればあるほど、使い方の制限や容量などの制約が増えてしまうのです。

また、要素が多いものにはもう一つ問題があります。
それは「壊れる箇所が増える」ということです。
私自身、わざわざ壊れやすいものを作りたくはありません。
むしろ、修理の手間さえ必要としない作りにすることこそが大切だと考えています。
そのため、私の作品では壊れやすい複雑な構造や無駄な金具は使わないよう意識しています。
そうした点を突き詰めてこそ、長く愛用していただけるものになると信じているからです。

また、トレンドについてはあえて意識しないようにしています。
取り入れるとしたら、色合いくらいです。
作品の形や構造、コンセプトといった本質的な部分を、流行に合わせて変えることはありません。
なぜなら、流行は必ず過ぎ去るものだからです。
流行に合わせて作った作品は、流行が去ったときにその役目を終えてしまいます。
私は、10年後、20年後も使い続けていただけるものを作りたいからこそ、流行とは一定の距離を置いています。
昔から存在し、今なお残り続けているもの。
それには、残るだけの明確な理由があります。

例えば「がま口」というアイテムが、ヨーロッパで生まれてから200年以上、日本に渡ってからも150年近く愛され続けてきたのも、その本質にシンプルな美しさと機能美があるからだと私は思います。
流行から生まれたものは流行とともに消えますが、本物には残り続ける理由があるのです。

シンプルさを追求することは、職人としての覚悟が試されることでもあります。
私はこれからも、その覚悟を持ち続けてモノづくりに向き合っていきたいと思っています。

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