財布が好きで、興味を持った財布を購入したり、尊敬する職人さんの作品を集めたりするうちに、自然と革製品への関心が深まっていきました。
そんな自分が本気で革工芸に向き合うきっかけになったのは、パートナーからのある言葉でした。
「次の誕生日に財布を作ってほしい」
その言葉を聞いたとき、これまで数多くの財布を見てきたからこそ、
「ただ普通の財布を作るのでは意味がない」
「誰かのまねをしたような財布は贈りたくない」
と強く感じました。
何を作るべきか悩みながら、自分の記憶や身近な人たちのことを改めて思い返しました。
すると、幼い頃の記憶の中には、いつも“がま口”がありました。
母や祖母が好んで使っていたこともあり、遠足やお小遣いを入れる財布といえば、自分にとっては自然とがま口だったのです。
これほど身近な存在だったにもかかわらず、自分はがま口のことを何も知らない。
そう気づき、興味を持って調べていく中で、「親子がま口」という存在に出会いました。
その瞬間、
「このがま口をパートナーの好きな色で作れば、唯一無二の財布になるのではないか」
と思いました。
そして親子がま口について学び、試行錯誤を重ねながら制作に取り組みました。
今振り返れば、そのとき作ったがま口は決して完成度の高いものではありません。
しかし、当時の自分にできる精一杯の作品でした。
この経験をきっかけに、自分はがま口の魅力に強く惹かれ、
「もっと極めたい」
という思いを抱くようになりました。
そして、それが本気で革工芸の道を歩み始める大きな転機となりました。





